飲食店開業、物件取得費と保証金「償却」について

公開日: 2019年3月5日

飲食店開業において、全体予算の大きな費用を締めるのが①物件取得費、②内外装工事費、③厨房機器および工事費となります。物件が居抜きか?または、スケルトンか?でも費用は大きく異なります。ここでは①の物件取得費用の項目と注意点を見ていきましょう。

物件取得費とは

物件取得費とは、建物賃貸借契約時に発生する費用を総称したものです。

事業用物件の場合、物件の諸条件によりそれぞれ物件取得費の項目が異なったり、物件概要書を見ても物件取得費に総計いくら支払わなければならないか?書かれていないものも多いので気をつけましょう。

物件取得費の計算時よく使われるのが「家賃(1ヶ月分)」という単位です。保証金は家賃の6ヶ月分というように計算される事が多いので、生ずる項目を見落とすと何十万単位で誤差が生じます。一般的な物件取得費の項目を自身でも把握し、早い段階で不動産業者へ必ず確認しておきましょう。

事業用の物件取得費の項目とは何か?

一般的は以下のような項目がそれにあたります。

・敷金(保証金ということもあります)

・礼金(大家さんへ支払う費用)

・前家賃(賃貸契約時に翌月分の家賃を先払いすることから「前家賃」と呼ばれます。賃料発生が月半ばの場合は日割り計算を行います)

・管理費(共益費ということもあります)

・仲介手数料(不動産手数料ということもあります、仲介をした不動産業者へ支払う費用)

 

 

物件概要書の例

上記物件の場合

・保証金 10ヶ月

・礼金 1ヶ月

・前家賃 1ヶ月

・共益費(無:賃料に含む)

・仲介手数料 1ヶ月

物件契約時に必要な物件取得費は家賃の13ヶ月分となります。

その他の項目(物件の諸条件により異なります)

 

・造作譲渡費(居抜き物件に既存造作物や什器備品類等の店舗資産を譲り受けるために、買主から売主に支払う費用のこと。店舗資産譲渡費ということもあります。)

・店舗資産販売手数料

・企画料

・レポート料

賃貸契約での保証金「償却」とは

下の物件概要書に記載されている「償却 2ヶ月」とは何を意味しているでしょう。

物件概要書 「償却」の例

「償却」とは、保証金(賃貸物件を借りる時、通常借主が賃料の数か月分相当を貸主に預ける金額)のいくらかが手元に戻ってこないことを意味します。これは賃貸借契約の保証金償却の形態に記載されているので必ず契約時チャックする必要があります。

上記図の赤い四角のように「償却2ヶ月」と物件概要書に記載されている場合は、保証金の預け入れが賃料の10ヶ月分で、解約時2ヶ月分差し引かれ、手元に戻ってくるのは8ヶ月分という事になります。

「償却」の記載には一般的に2種類のパターンがあります。

貸店舗の募集条件には、【1】「(解約時)償却○ヶ月」のように賃貸借契約の解約時に保証金の○ヶ月分が解約時に差し引かれ手元に戻ってくる場合と【2】「保証金の償却年○%」のように1年毎に○%保証金が減っていく場合です。

【1】「(解約時)償却○ヶ月」と記載されている場合

上で説明したように赤四角のように「償却2ヶ月」と物件概要書に記載されている場合は、保証金の預け入れが賃料の10ヶ月分で、解約時2ヶ月分差し引かれ、手元に戻ってくるのは8ヶ月分という事になります。

【2】「保証金の償却年○%」と記載されている場合

例えば保証金300万円「保証金の償却年3%」契約期間3年となっていた場合、

1年目 300万円x3%=9万円

2年目 300万円x3%=9万円

3年目 300万円x3%=9万円

と毎年9万円ずつ保証金残高が減る。3年契約と場合の償却は27万円で当初の300万円の保証金が273万円の残高となります。契約を新しく更新する際には、27万円を補填し、保証金合計額を300万円にする必要があります。

そもそも保証金とは、貸主が借主の賃料滞納などのリスク回避する為の担保目的で借主から一時的に預かるものです。

しかし現状は、「原状回復」や「クリーニング」等の費用にあてられることが多く退去時に全額戻ってくることは「ほとんどない」といってよいと思います。

「原状回復」についても曖昧な理解のまま契約をすると退去時多額の費用が発生しもめるケースが多々ありますので要注意です。

必ず賃貸借契約時に「どこまで原状回復をしなければならないのか?」十分に確認し納得した上で物件契約を行ってください。